生前墓じまいと死後墓じまいの最大の違いは、誰が、いつ意思決定と準備を担うかです。改葬許可や墓石撤去などの手続きは、生前・死後で大きく変わりません。
まず確認するのは、遺骨の行き先、現在の墓地使用者と管理規則、家族の意向です。この3点が分かれば、元気なうちに工事まで進めるか、情報整理だけ始めるかを判断できます。
墓地使用者や親族の意向が分からない段階では、撤去契約を急がないでください。現在の墓地管理者と、お墓がある市町村に確認してから進めると、必要書類や工事条件の行き違いを減らせます。
- 生前と死後では意思決定を担う人が変わりますが、改葬や撤去の基本手続きは共通です。
- 生前なら希望と書類を家族に共有でき、工事をせず準備だけ進める選択もあります。
- 費用は実施時期だけで決まらず、墓所条件・遺骨数・納骨先・依頼範囲で比べます。
生前墓じまいと死後墓じまいの違いを比較
墓じまいとは、現在のお墓を解体・撤去して更地にし、墓地管理者に使用権を返還する行為です。
生前墓じまいは、本人が生きているうちに、今あるお墓を閉じることです。新しいお墓を用意する「生前墓」とは違います。
死後墓じまいは、本人の死後に墓地使用者や家族などが確認しながら進めます。生前と死後のどちらにするかは、本人の意向を直接確認できるか、準備を誰に引き継ぐかで考えます。
| 比較項目 | 生前墓じまい | 死後墓じまい |
|---|---|---|
| 進める人 | 本人が家族と相談 | 墓地使用者や家族が確認 |
| 本人の意向 | 直接伝え、記録できる | 記録や家族の記憶を確認 |
| 準備時間 | 比較時間を取りやすい | 他の手続きと重なる場合がある |
| 費用準備 | 本人が範囲を決めやすい | 家族で原資と分担を確認 |
| 行政手続き | 改葬許可が必要 | 改葬許可が必要 |
| 死後の作業 | 共有次第で減らせる | 工事・納骨・契約を確認 |

生前に準備しても、家族の意向を無視してよいわけではありません。反対に、死後に行う場合でも、本人が残した書類や希望があれば判断の負担を減らせます。
墓じまいの手続きは生前も死後も共通
墓じまいは墓石を撤去する工事、改葬は遺骨を別の墓地や納骨堂へ移す行政手続きです。実務では両方が関係しますが、同じ意味ではありません。
最初に遺骨の行き先と墓地の名義を確認する
新しい納骨先を決める前に、現在のお墓に納められている遺骨の人数と状態を確認します。墓地使用許可証や契約書があれば、使用者名義、返還条件、指定石材店の有無も見ておきます。
墓を閉じる理由、遺骨をどこへ移すか、費用を誰がどこまで負担するかを共有します。
墓地使用者、返還条件、必要な証明、工事業者の制限を確かめます。
新しい墓、納骨堂、永代供養墓などを比較し、受け入れ条件を確認します。
現在のお墓がある市町村へ申請し、必要な証明書類を揃えます。
許可証と墓地規則を確認し、石材店と日程・工事範囲を合わせます。
改葬先へ納骨し、現在の墓地管理者と返還完了を確認します。
改葬許可は現在のお墓がある市町村へ申請する
改葬には市町村長の許可が必要です。申請先は新しい納骨先の自治体ではなく、現在のお墓がある市町村です。
申請書、現在の墓地管理者による証明、新しい納骨先の受入証明などを求める自治体があります。様式、手数料、交付までの日数は自治体で異なるため、窓口や公式サイトで確認してください。
- 改葬許可を得る前に遺骨を別の墓地へ移す
- 墓地管理者へ確認せず、撤去工事だけ先に契約する
- 墓地使用者と申請者が違うのに、誰の承諾が必要かを確認しない
該当する場合は作業を止め、墓地管理者と現在のお墓がある市町村へ相談します。古い共同墓地などで管理者や名義が分からないときも、手元の書類と分かる経緯を整理してから自治体へ確認してください。
生前に済ませやすいことと死後に残ること
本人が生前に決めて共有できること
生前墓じまいの大きな特徴は、本人が冷静な状態で方針を決められる点にあります。
本人は、どの遺骨をどこへ移すか、どの供養方法を希望するか、費用をどこまで準備するかを家族へ直接説明できます。墓地や納骨先を比較する時間も取りやすくなります。
- 現在の墓地使用許可証、契約書、管理者の連絡先
- お墓に納められている遺骨の氏名と人数
- 希望する改葬先と、個別安置・合祀などの条件
- 見積書、契約範囲、追加費用が発生する条件
工事まで完了させない場合でも、この情報を一か所にまとめ、保管場所を家族へ伝えるだけで意味があります。希望だけでなく、連絡先と書類の場所まで残すことが引き継ぎになります。
死後に家族や担当者が確認すること
本人が生前に方針を決めても、死後に納骨する契約なら、家族や担当者が連絡と実行を担います。費用を支払い済みでも、契約先、必要書類、当日の手続きが自動で進むとは限りません。
死後に初めて墓じまいを決める場合は、葬儀や相続関連の手続きと時期が重なることがあります。先に墓地使用者と遺骨の行き先を確かめ、撤去業者の選定だけを急がないことが大切です。

生前に決めることと、死後に実行することを分けて記録すると、家族は残った作業だけを確認できます。担当者名、連絡先、契約番号、書類の保管場所も一緒に残しましょう。
費用差は時期より墓所条件と依頼範囲で決まる
生前に行えば必ず安く、死後なら高くなるわけではありません。見積もりを比べるときは、次の4つの条件をそろえます。
- 墓所の条件:区画の広さ、墓石量、重機や車両が入れるか
- 遺骨の数と状態:骨壺の数、取り出し後の取り扱い
- 新しい納骨先:個別安置か合祀か、管理費や納骨時の費用
- 依頼範囲:行政書類、運搬、撤去、整地、納骨のどこまで含むか
地域や墓石の大きさ、業者、納骨先によって実際の金額は大きく変わります。
複数の見積もりを比べるときは、撤去面積、基礎の撤去、運搬、整地、追加料金の条件を揃えます。寺院から宗教儀礼や離檀に伴う費用を示された場合も、名目と金額の根拠を確認してください。
誰が払うかは、生前なら本人、死後なら遺族と自動的に決まるものではありません。見積もりの対象範囲を費用に関わる家族で共有し、本人の準備資金、家族の負担、支払時期を話し合います。
生前と死後のどちらを選ぶか判断する目安
生前墓じまいを進めやすいのは、本人が現在の墓地使用者で、「将来お墓を管理する人がいない」などの問題が見えている場合です。遺骨の行き先について家族と話せており、費用と工事条件を比較する時間も確保できます。
一方、家族の意見が分かれている、墓地の名義が分からない、新しい納骨先が決まっていない場合は、工事を急ぐ段階ではありません。書類探しと関係者への確認だけを生前に進める選択があります。
- 本人の希望だけ決め、家族へ契約先や書類の場所を伝えていない
- 新しい納骨先の合祀時期や、後から遺骨を取り出せるか確認していない
- 墓地返還と改葬許可を、石材店への依頼だけで完了できると思っている
当てはまる項目があれば、工事日を決める前に不足している書類や確認事項をそろえます。生前か死後かの二択ではなく、生前に準備し、実行時期は家族と決める方法も検討できます。
墓じまいの時期を決める前に家族で揃える3つの情報
墓じまいを生前に行うか、死後に引き継ぐかを決める前に、次の3つを一枚のメモにまとめます。
- 遺骨の行き先:候補、受け入れ条件、合祀時期
- 墓地の情報:使用者名義、管理者、返還・工事規則
- 家族の意向:残したい供養、担当者、費用の範囲
このメモをもとに、現在の墓地管理者へ返還条件を、お墓がある市町村へ改葬許可の方法を確認します。その回答と家族の合意が揃ってから、工事をするか決めましょう。



