地方に眠る夫婦墓や家族墓を、このまま維持すべきか改葬すべきか。
そう悩む人が、ここ数年で急増しています。
専門業者によると、改葬許可証の発行件数は令和4年度で約15万件を超え、過去最高水準に達しています。
「改葬」はもはや特別な選択ではなく、多くの家族が向き合う現実の問題になりました。
将来、子世代や孫世代と「どこで合流するか」を見据えたとき、夫婦墓や家族墓をどう改葬すればよいのか。選択肢を整理しながら、後悔しないための考え方をお伝えします。
改葬が急増している背景、その根本にあるもの
少子高齢化と都市部への人口移動が進むなか、地元の墓地に通い続けることが難しくなる家族が増えています。
後継者がいない、子どもが全員遠方にいる、そうした状況が重なり、「今のうちに動いておきたい」という声が高まっています。
ここで混同されがちな言葉を整理しておきます。
「改葬」とは、現在のお墓から遺骨を取り出して新しい埋葬先に移す、一連の手順全体を指します。
一方、業界団体の見解では「墓じまい」はお墓を撤去して更地に戻す行為に限定して定義されています。
どこかで「改葬と墓じまいは同じ」と聞いた方も多いと思いますが、手続きや費用を考えるうえで、この違いは意外と大切です。
夫婦墓にするか、家族全員が合流できる墓にするか
夫婦墓や家族墓の改葬を考えるとき、最初に決めるべきことがあります。
「将来、誰と一緒に入るか」これが、すべての選択の出発点です。
夫婦だけで完結させたいなら、小規模区画や永代供養型の夫婦墓が候補になります。
子どもに墓守の負担を残さない設計にしやすく、費用を抑えやすい面があります。
ただし注意が必要で、子世代が「自分も同じ墓に入りたい」と希望したとき、対応できないプランも存在します。
契約前に利用規約をしっかり確認することが欠かせません。
親世帯・子世帯を含めて合流させたいなら、複数の遺骨を受け入れられる家族墓や、合葬に対応した永代供養墓が選択肢になります。
一か所に集まることで家族が墓参しやすくなる面がある反面、将来的に納骨できる数には物理的な上限があります。
区画サイズや収容可能数は、施設によって異なるため事前確認が必要です。
「夫婦墓がいちばん合理的」「家族墓にするべき」と一律に言えるものではなく、家族構成や価値観によって最善の答えは変わります。
改葬どうするか決める前に、法的な大原則を知っておく
改葬を進めるにあたって、絶対に外せないルールがあります。
現在のお墓がある市区町村で「改葬許可証」を取得することが、法律で定められています(墓地、埋葬等に関する法律 第5条)。
許可を取らずに遺骨を移動させると、法律違反になる可能性があります。
申請に必要な書類は自治体によって異なりますが、一般的に求められるものは以下の通りです。
- 改葬許可申請書・埋蔵証明書・改葬先の受入証明書
- 墓地使用者と申請者が異なる場合は、承諾書や委任状
「全国で手続きが同じ」という思い込みはリスクになります。
必ず現地の自治体窓口か、行政書士などの専門家に確認してから動き始めましょう。
将来の合流を見据えた、改葬先の選び方
改葬先として多く選ばれているのは、永代供養墓・納骨堂・樹木葬などです。
ここで一つ、よくある誤解を解いておきます。
「永代供養=永遠に供養される」とは限りません。
多くの施設では、一定期間個別安置した後、ほかの遺骨とまとめて合祀される仕組みになっています。
期間や供養内容は施設ごとに異なるため、「永代」という言葉だけを信じて契約するのは危険です。
また、将来の子世代も合流できるかどうかは、施設の受け入れ人数や規約に依存します。
「子どもも同じ場所に入れる」と想定しているなら、その点を契約時に明確にしておくことが、後悔しないための肝になります。
改葬先を選ぶ際の目安として、タイプ別に整理しました。
| 改葬先タイプ | 合流のしやすさ | 管理の手間 | 費用の傾向 |
|---|---|---|---|
| 家族墓(墓石型) | 複数世代に対応しやすい | 継続的に必要 | 比較的高め |
| 永代供養墓(合同墓) | 個別安置期間に応じて対応可 | ほぼ不要 | 抑えやすい |
| 納骨堂(室内型) | 区画・人数制限あり | 管理費あり | 立地により差大 |
| 樹木葬 | 合葬型なら合流可能 | ほぼ不要 | 比較的抑えやすい |
費用や収容可能人数は施設・立地・契約内容によって大きく異なります。
必ず複数の施設で見積もりを取ったうえで判断してください。
親族との合意が、改葬トラブルを防ぐ最大の対策
改葬で起きやすいトラブルの多くは、親族間の話し合い不足から生まれます。
墓地の使用名義人と改葬を進めたい人が異なる場合、承諾書がないと手続き自体が進みません。
費用の負担をどう分けるか、先祖の遺骨をどう扱うかなど、家族間で意見が割れることも少なくありません。
動き始める前に、関係する親族と丁寧に話し合う時間を取ることが大切です。
菩提寺がある場合は、離檀の相談が必要になることもあります。
離檀料の金額や支払い義務に一律のルールはないとされており、早めに寺院側と向き合っておくほうがスムーズです。
費用面では、墓石の撤去・整地、閉眼供養のお布施、遺骨の搬送、新しい墓地の取得費など複数の項目が積み重なります。
見積もりなしに動き始めると、予算を大幅に超えるケースもあります。
石材店や行政書士など複数の専門家から見積もりを取り、事前に全体像を把握しておきましょう。
まとめ:夫婦墓・家族墓の改葬は「誰と合流するか」から逆算して決める
夫婦墓・家族墓の改葬で後悔しないための出発点は、「将来、誰がどこに合流するか」を先に考えることです。
その答えが見えてくれば、夫婦墓か家族墓か、永代供養墓か納骨堂かという選択肢は自然と絞れてきます。
改葬許可の取得は法律上の義務であり、手続きの内容は自治体ごとに異なります。
永代供養の期間や合流できる人数など、見落としがちな条件を確認しながら進めること。そして、親族との合意と費用の全体像を先に固めること。
この順番で動くことが、最終的に「あのとき、ちゃんと考えてよかった」と思える改葬につながります。

