成年後見制度で親の墓じまいを進めるときに知っておきたい手続きの注意点

認知症の親の財産管理に成年後見制度を使っているとき、「墓じまいも後見人に頼めばいい」と思っている方は少なくありません。

ところが実際には、成年後見人が墓じまいに関わる費用の支出や祭祀財産の処分を行うには、いくつかの制限があります。知らないまま進めると、家庭裁判所や関係者との確認が必要になったり、親族間のトラブルに発展したりすることもあります。

成年後見人の権限は「生前の財産管理」が中心

成年後見制度は、判断能力が低下した親の代わりに財産管理や契約を行う制度です。ただし、後見人の権限は本人が生きている間の財産管理と身上監護が中心であり、葬儀・納骨・墓じまいといった祭祀に関わる手続きは、通常の財産管理とは分けて考える必要があります。

成年後見人が墓じまいの費用を親の財産から支出する場合は、その支出が本人のためのものと説明できるかを慎重に確認する必要があります。判断に迷うときは、事前に家庭裁判所や専門家へ相談しておくと安心です。

見積書や契約書など客観的な書類が揃っている支出と、お布施や法要費用のように内容を説明しにくい支出では、確認すべき点が変わります。本人の意思や親族の意向を確認し、後から説明できる形で記録を残しておくことが大切です。

親が亡くなった後は、後見人の権限がなくなる

成年後見人の任務は、本人が亡くなった時点で終了します。

死亡後の葬儀・納骨・墓じまいは、後見人の通常の権限とは別に考える必要があります。例外的に一定の死後事務が認められる場合もありますが、墓じまい全般を自由に進められるわけではありません。

墓じまいの手続きを動かせるのは「祭祀承継者」

お墓・仏壇・位牌などを引き継ぎ、供養を担う人を「祭祀承継者」と言います。改葬許可証の申請など、墓じまいの行政手続きでは、祭祀承継者やその委任を受けた人が関わる場面が多くあります。

後見人になっても、祭祀承継者には自動的になれない

成年後見人に就任しても、当然に祭祀承継者になるわけではありません。祭祀承継者は、本人の生前の指定や家族の慣習、必要に応じた家庭裁判所の判断などによって決まることがあります。

祭祀承継者と後見人が別の人物である場合、後見人だけで墓じまいを決めるのは避けるべきです。祭祀承継者からの委任状が求められることもあり、手続きが複雑になります。

また、成年後見が開始されている場合でも、祭祀承継者をどう考えるかは個別の事情によって異なります。「後見がついているから祭祀承継者になれない」と決めつけず、関係者で確認しながら進めることが大切です。

任意後見契約だけでは死後の墓じまいをカバーできない

親が元気なうちに任意後見契約を結んでいる場合も、注意が必要です。任意後見契約は本人が亡くなると終了するため、死亡後の葬儀・納骨・墓じまいは契約の対象外になります。

この空白を埋めるには、「死後事務委任契約」を別途結んでおく方法があります。葬儀・納骨・墓の手配・墓じまいを契約に明記しておくことで、後見終了後の手続きを任せやすくなります。任意後見と死後事務委任契約を組み合わせるべきかは、家族構成や財産状況、本人の希望に合わせて検討しましょう。

加えて、親が生前に遺言書などで祭祀承継者への希望を残しておくと、後の話し合いの参考になります。エンディングノートに墓じまいへの希望を書き残しておくことも、関係者が状況を確認する際の材料になります。ただし、エンディングノートだけで法的な手続きを代替できるわけではない点は押さえておく必要があります。

まとめ:成年後見と墓じまい、制限を正確に知ることがトラブル防止につながる

成年後見制度は、認知症の親の財産管理において頼りになる制度です。ただし、墓じまいに関しては費用の支出にも祭祀財産の処分にも制限があり、後見人が自由に動ける場面は限られています。

親が存命中に墓じまいを進めるなら、家庭裁判所への事前相談や推定相続人への意向確認を検討しましょう。親が亡くなった後は後見人の権限が終了するため、祭祀承継者や相続人が主体となって手続きを進めることになります。また、任意後見契約だけでは死後の墓じまいまで対応しにくいため、死後事務委任契約や遺言と組み合わせることも選択肢になります。

成年後見制度でできることとできないことの線引きを確認しておくことが、認知症の親の墓じまいを進めるための出発点です。判断に迷ったときは、司法書士・行政書士・弁護士などの専門家に早めに相談することをお勧めします。